技術のその先にあるもの

最近は中国の音楽バラエティ番組『中国好声音(the Voice of China)』第二季(2013)を見ながら夕食をとっている。

この番組はプロの音楽歌手である4名の審査員が、基本的に素人(挑戦者)の「歌のみ」を聞いてその合否を判定していくという内容。そのため審査員たちは挑戦者が歌っているときは、彼らに背を向けながらその歌唱だけを聞いている。

第二季の審査員は那英・庾澄慶・汪峰・張惠妹の四人。このうち汪峰(女優チャン・ツィイーと結婚した)が歌い終わった挑戦者たちにたびたび「あなたの夢は何ですか?」「あなたが歌う原動力になっているのは何ですか?」と聞くので彼は何でこうしたことがそんなに知りたいのだろうと少々気になっていた。

『中国好声音』第二季第五期を見ている途中でようやくその質問の意図がわかってきた。楊添茸という女性の挑戦者がいたのだけれども、彼女の歌唱に対しては審査員が誰も振り向いて合格の判定を出さなかった(33分過ぎ当たり)。

その実彼女の歌唱はとても上手で「完璧すぎる」くらいだったのだけれども審査員の心をつかむことはできなかった。その時の汪峰のコメントを簡単に要約すると、「あなたの歌唱の技術は高いけれども私たちの心に訴えるものがない、人を感動させる力が足りない。歌唱が一定のレベルに達したとき、ポイントはまさにそこになる。」というものだった。

どうやらどんなに歌唱力が高くてもそれだけでは汪峰等の審査員は満足しないらしい。単に歌の技術的な問題ではなく、その歌に自分の心・魂を乗せてどれだけ人を感動させられるかがもっと大切なのだ。そして歌に自分の心・魂がどれだけ宿るかは「その人がどんな夢を持っているのか」「過去にどんな体験をし、その体験がその人が歌い続けるどんな原動力になっているのか」と大きく関わっている。

つまり、汪峰は心のこもった歌、魂の感じられる歌であれば合格の判定を下しており、そして彼はその人の歌に「心」「魂」が宿るようになった所以(ゆえん)を知りたいということらしい。彼が見ているのは歌唱者の歌の単なる「技術」ではなく、その人の「心」「魂」なのだ。

番組を見ながらさすがに超一流歌手は違うのだなと思ってしまった。

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